積分球を用いた絶対発光量子収率測定法の開発

 蛍光量子収率は,蛍光寿命とともに励起分子の特性を示す重要な光物理量で,古くから種々の測定方法が提案されてきました。蛍光量子収率測定法は,大きく絶対法と相対法に分けられます。相対法は量子収率が既知の試料溶液と量子収率を求めたい試料溶液の蛍光スペクトルを同条件で測定し,その積分強度を比較することにより試料の量子収率を求める方法です。装置の分光感度補正,溶媒の屈折率補正以外は複雑な補正を要しないため,一般にはこの方法が用いられています。一方,絶対法は量子収率既知の参照試料を用いないで量子収率を求める方法です。しかし,この方法で正確な量子収率を得るには,溶液の屈折率の効果,偏光の効果,再吸収の効果など,様々な補正を必要とするため,一般にはほとんど用いられていません



図1 積分球を用いた絶対発光量子収率測定装置
Integrating Sphere:積分球,Xe Lamp:キセノンランプ,MC:分光器,OF:光ファイバー
SC:試料セル,B:バッフル,BF:バンドルファイバー,BT-CCD:背面照射型CCD
PC:パーソナルコンピューター

 最近,我々は浜松ホトニクス鰍ニの共同研究により,積分球を用いて溶液試料の絶対発光量子収率を求める装置を開発しました。その装置の概略図を図1に示します。積分球の内壁にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を原料とする多孔質拡散反射材料がコートされています。試料に吸収されなかった入射光,及び試料から放出された蛍光は,積分球の内壁で拡散反射を繰り返すことにより,均一化された光となります。その結果,絶対法でありながら溶液の屈折率や偏光の効果を補正することなく,簡便に発光量子収率を求めることができます。この方法は,溶液に限らず,固体粉末やフィルムさらに77K低温マトリクス中の試料(図2)の発光量子収率も求めることができるため,広い分野への応用が可能となります


図2 77K低温マトリクス中の試料の量子収率測定装置


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