細胞内酸素濃度の計測

 私たちの体は、約60兆個の細胞からなるといわれています。この膨大な数の細胞は、絶えず血流を通じて酸素と栄養が供給されないとその機能を果たすことができません。人間が何らかの理由で呼吸できない状態に陥ると、すぐに生命が奪われてしまうのは酸素の供給が絶たれて細胞が機能しなくなってしまうためです。
 図1Aは培養液を含むシャーレの底に接着して、外界から酸素の供給を受けながら生きている培養細胞を表した図です。この2次元に広がった細胞層の上を薄いガラスプレート(cover slip)で覆うとその下の細胞は上面からの酸素の供給が絶たれるため、低酸素状態に陥ると予想されます。細胞にあらかじめイリジウム錯体BTPDMを取り込ませておいてから、ガラスプレートのエッジ付近を蛍光顕微鏡で拡大して取った画像(図1Bの下)を見ると、プレートの内側の細胞が外側の細胞に比べて強く光っているのがわかります。さらに、プレートの内側と外側でBTPDMの発光寿命を取ったところ(図1Cのaとb)のようになり、酸素の供給が絶たれた細胞の寿命が長い、すなわち低酸素になっていることがわかりました。この寿命の値を解析することにより、プレートの内側の細胞の酸素分圧は6.9 mmHg、外側は166 mmHgとなり、内部がかなり低酸素状態に陥っていることが明らかになりました。




図1 培養細胞の酸素分布の測定


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